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OCT MAGAZINE

2007.11.15

「クズネッツの波」を知っていますか?

こんにちは、TAの田中です。

卒業設計提出まで残すところ84日(全130日間)となりました。すでに約35%の日程が経過しました。皆さんの進捗はいかがですか?未だに「コンセプトが決まらない。」とか「エスキスが・・・。」などと言ってる人はいませんか?コンセプト決定が作品の30%以上も占めるものはありません。そろそろプロジェクト全体の構想を纏めて模型やラフプランでケーススタディをしたり、コンセプトの根拠付けや検証の為のサーベイ&リサーチを行う時期ですよ。先週の大野さんの投稿にもあるように「他人の意見をサーベイする」というのは特に効果的です。違う視点から見るというのは中々自分自身では出来ないことです。数多くの意見を聞き推敲、修正を加えてプロジェクトを方向づけて行く。そういう作業が行われた作品は見る者にある種の「濃密さ」を感じさせます。この「濃密さ」こそが評価に値すると思います。

 

ところで私事ですが僕も先日、ついに「不惑」の年を迎えてしまいました。孔子の論語「為政第二」にある「子曰、吾十有五而志於学。三十而立。四十而不惑。五十而知天命。六十而耳順。七十而従心所欲、不踰矩。」の「不惑」ですが、しかしながら、この年になって更に「惑い」ばかりです。しかし、年を取った分、他人の言語に惑わされる不安が無くなり、逆にその分、人の話が素直に聞けるようになっってきているような気がします。30代の頃はプライドやスキルが邪魔して人の話を聞いているフリをして、その実、それを許容する器が無かったような気がします。これからはあらゆる他を受け入れながらも、揺るがない器であれる自我を持ちたいものです。

このことはおそらく設計にも大いにいえることなんでしょうね。「負ける建築」や「連勝連敗」なんて本があるくらいですから・・・。

 

以前のBlogで「建築=経済」といいましたが、建築学を学ばれている皆さんは「経済なんて関係ないよ」ときっと思われていることでしょう。

経済学の基礎知識に4つの経済循環というのがあります。景気循環というのは所謂、「景気の波」と言われるものでバイオリズムのようなものです。これが短期~超長期までの4つのサイクルで波打っているわけです。「景気の波」といっても実際に見えるものではなく、過去の各経済指数などを基に今、景気の山なのか、谷なのか、もしくは上昇トレンド(傾向)なのか、下降トレンドなのかを判断するのです。そうすることによって今の立ち位置を把握し、これから成すべきことを考える訳です。

この4つの景気循環の一つに「建築」とは切っても切れない「クズネッツの波」(建築循環)というものがあります。「クズネッツの波」とは住宅や商工業施設の建替え需要に併せた約20年周期の景気サイクルがあるという理論です。分かりやすく言うと、建築というものは毎年一定数量が供給もしくは更新(建替)される訳でなく、ある時期に需要が集中し、その更新(建替え)時期も同じくある時期に集中するというものです。それが建築の耐用年数である20年間ぐらいの波で訪れるというものです。

建築に携わっている人であればそんな理論は知らずとも「最近、古ビルの建替え現場が増えたなぁ」とか「団塊の世代ジュニアの住宅建築が増えたなぁ」とか感じるはずです。そういうことを意識せずにボーっと状況を眺めていてはいつの間にか「あ~最近、仕事が減ったなぁ」で終わってしまいます。折角ですからそうでは無く「クズネッツの波」の上昇トレンドの時期に建築として成すべきことをし、下降トレンドに備える。そういうサーファー的バランス感覚は建築に携わる人にも大切だと思います。

ちなみに2006年から2011年まではこの4つの景気循環の景気の山が重なる「ゴールデンサイクル」と言われています(イメージでいうと惑星直列みたいなもの?)。事実の真偽ほどは分かりませんが今の景気がある種の絶頂期を迎えるのは確かです。

[PDF]? 「ゴールデン・サイクル(黄金循環)」がやって来る

ゴールデン・サイクル~ 「いざなぎ超え」の先にあるもの ~嶋中 雄二 著

 

内閣府の発表する景気日付基準日によると戦後から現在まで14回の景気循環があったとされています。先ほどの2011年を今の景気のピーク(山)と予測するとその20年前の1991年2月は「バブル景気」の山と合致します。更にその21年前の1970年7月はオリンピック景気と列島改造景気に挟まれた戦後2番目の好景気とされる「いざなぎ景気」の山と合致します。更にその19年前の1951年6月は戦後最初の景気循環である「特需景気」の山と合致するのです。

正に「クズネッツの波」は景気の山に合致し、建築ラッシュと呼応します。そして建築界での「モダニズム」「メタボリズム」「脱モダニズム」「ポストモダン」「ミニマリズム」「脱構築主義建築」などの建築運動をこの「クズネッツの波」にひとつのレイヤーとして重ねると「クズネッツの波」の山から山への狭間にちょうど嵌まり込むのです。とすれば2011年以降には新たなる建築的局面が展開されるのではないかと考えられます。

 

何を言わんかというと、皆さんが卒業される2008年は戦後最長と言われた「いざなぎ景気」を上回る長期の景気循環の中にあります。その好景気に後押しされて社会は皆さんにとっていろいろな意味で広き門となっています。今はいろいろな可能性を試す土壌があり、又、自分の実力を発揮できるシーンがあるはずです。しかし景気の山を越え下降トレンドに入ればその機会は少しずつ失われてゆきます(すでにサブプライム問題、建築基準法改正による着工減、円高ドル安なども景気トレンド転換の懸念はありますが・・・)。その為にも今、自分が何を目指し、何をすべきかを常に自問自答し、そして行動することがとても大切です。その為にも広い見識を持ち、利己主義や自己満足に陥らず唯識思想のように拘りを払拭することにより新たに見えてくるモノがあるのではないでしょうか?。「卒業設計」はきっとそれを見出す為の一つのエクササイズであると思います。出来ることであればそこで何かを見出して卒業式には新たな志を持って卒業していただきたいと願うばかりです。

 

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