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教室を飛び出して

大工技能学科
2018.09.04

〜棟上げ実習編〜

(左):山本剛大さん[所属:大工技能学科]
(右):荒井圭一郎先生 [担当:大工技能学科、建築学科]

大工技能学科の2年次には、約13名ずつの3チームに分かれ、2階建ての建物を施工するという名物授業「建築技能実習」があります。毎年7月初旬には公開実習として、建物の屋根のもっとも高い箇所に位置する梁を取り付ける「棟上げ」を実施。今年は、11年目(!)にして初の試みとして、1チームが野外にて作業に挑戦しました。舞台は大阪駅の北西に位置する広場、うめきたサザンパーク。チームの棟梁を務めた2年生・山本剛大さんと担当教員・荒井先生に、着工から完成までの2ヶ月間を振り返ってもらいました。

▲うめきたサザンパークで棟上げ実習を行なったC班

荒井:この授業の狙いは、やはり学生たちにできるだけリアルな現場を経験してもらうこと。でも学校の実習室だと、クーラーも効いてて涼しいし、電気や水道の設備も整った、生ぬるい環境なんですね。トレーニングのためには大事ですが、本物の大工はどんな環境であっても良い仕事が求められる。そんな想いから、今回うめきたサザンパークの借主・一般財団法人うめらくさんにご協力いただき、野外での棟上げが実現しました。

山本:やっぱり現場に出ると、環境がガラッと変わりますね。これまで材木の加工や仮組は、実習室で行っていましたが、炎天下での作業は想像以上に大変でした。設備や道具もその場に調達しなければならないし。また保護者やOBのみなさん、関係者に見守られながらの作業は、なかなかのプレッシャーでした。

荒井:今回、OCTに関わりのある方から「信州に仕事小屋を建てたいので、実習の機会に生かしませんか?」というお誘いがあって、うまくいけばこの建物を納品する予定なんです。だから、学生とは言え、プロ並のクオリティが求められる。教員が設計プランをつくりましたが、いつもつくっている建物より加工量が多いし、大変だったんじゃないかな?

山本:そうですね。春休みに、そのプランをもとに図面化するという課題を出されたのですが、複雑な木造2階建ての建築図面で「うーわ、難しいなぁ……」と(笑)。初めて見る仕口[※1]があったので、どう墨付け[※2]しようかなと頭のなかで思い描くところからスタートしましたね。
※1 2つの木材に枘(ほぞ)と呼ばれる切り込みを入れ、接合させる方法
※2 墨糸と墨壺を使って、木材を加工するための印をつけること

荒井:親方がかなり細かく図面を引いてくださっていたので、学生たちにできるのかなと僕自身も不安になりました。実際、いきなり材木を刻んで[※3]失敗するということが少なくないんです。でも今回は細かく計画し、図面を引くことでロスなく正確に加工することができましたね。
※3 墨付けした印に沿って木材を切ること

山本:親方から教えてもらったことで、特に印象に残っているのは、登り梁[※4]の水上[※5]と、棟桁(棟木)の仕口について。斜めの屋根に対して、まっすぐ梁が入ってくるので、墨付けの仕方が複雑なんです。まずは僕が見本として指導を受けながら墨付けをして、そこで挙がった注意点をチーム全員で共有して作業を進めました。
※4 屋根の勾配に沿って、斜めにかけられる梁のこと
※5 水が流れる際に上流となる部分。ここでは登り梁上部のこと

荒井:実習中、指導のために大工技能学科を長年見守っていただいている大工さんにお越しいただきました。ご自身の機械道具をご持参くださったり、加工が難しい部分は原寸図を書いて持参してくださったり、しっかり向き合って指導いただきましたね。スケジュールも厳しかったから、「もっともっと早うやれ!」とか「もうやらなあかん、間に合わへんぞ〜」と声かけも、現場さながらでしたね。

山本:そうなんです。今回棟梁の仕事のなかで、一番大変だったのはスケジュール管理でした。僕は作業全体の進度を見ながらスケジュールを管理する立場にあったのですが、メンバーが個人ごとに割り振られた作業を本当に期限内に終わらせてくれるのかどうかが不安で。だからちょっと作業が遅れたりミスが起きたりすると、イライラしてしまう時期も……。他人に指示を出すのは、思っている以上に難しいなと実感しました。

▲C班のスケジュール表。担当や工期は細かく決められている


荒井:
そうやってリーダーが人のまとめ方を学ぶ一方で、それ以外の学生は、個人に割り振られた仕事をいかに時間内に間に合わせるかを学んでいきます。だから、スケジュールの組み立ては棟梁のみではなく、グループでまず話し合ってもらっていました。それを毎週、教員や親方が確認するという流れです。

山本:その日の作業進度によって予定を微調整していって、遅れた分の作業は、担当者に責任持って挽回してもらう。とは言え、僕も個人の仕事を抱えていますし、そちらも遅らせるわけにはいかない。結構忙しかったですね。

荒井:僕たち教員も「ほんまにできるんかな」とハラハラしていたけど、結局、棟上げの4日前くらいには材木の刻み作業ができていて、やればできるもんやなぁと感心しました。

山本:わりとスケジュールは押してましたね(笑)。とは言え、僕のチームは、指示をすれば責任を持って動いてくれるメンバーばかりだったので、よかったです。しっかり周りを見て、全体を把握して指示を出していくことが大事だなと学びました。棟上げ当日は、僕も「はよせえよ!」と催促する場面もありましたが、割り振られた仕事をしっかりこなしてくれましたし。

荒井:プロの建築業界では、目標を見据えて、いつまでに何をつくるかを明確にすることが重要ですからね。また建物はだいたい骨組みをつくる段階で歪みが発生するものなのですが、今回はたまたまかもしれないけれど、正確に材木が刻めていたようで歪みがほぼなく、親方にも「直さんでええ!」と言っていただいていたね。

山本:はい。屋根をかけるときにも、梁がきっちりおさまって、ホッとしました!

荒井:本来棟上げは、お施主さん[※6]や関係者が集って完成を見守り、建物の骨組みが完成したことを祝う行事なんです。大工にとっては、いわば舞台の上で施工しているようなもの。失敗すれば大恥をかくし、悪評が立てば仕事がなくなってしまうかもしれない。だから職人さんは前日寝られないくらい緊張するそうなんです。今回はお施主さんの代わりに、保護者やOBが駆けつけてくれたので、本番に近い緊張感をもって棟上げを体験できたのではないかと思います。社会では、学生時代の経験はゼロベースだなんて言われますが、梅田の中心でこんな実習ができるなんて、かなり良い経験じゃないかな。
※6 建物の注文主のこと

山本:はい。なんだか実際の現場の一端を経験できたような気がしました。この経験を仕事につなげていきたいですね。

Photo: Yasuyo Takahashi